昭和天皇 一部~七部
星3つ★★★☆☆
ようやく完結。一巻を読んだのがかなり前になるから、うろ覚えのレビューになるね。
一人の人物伝として七巻はさすがに長すぎる。が、それには理由がある。あるが、それはポジティブな理由ではない。
昭和天皇の生誕前から始まり崩御までのことが書かれているわけだが、合間合間にまったく関係ない人物の話が数ページ挿入されている。いや、関係ないと言ってしまうとちょっと違うか。昭和天皇と同時代を生きた人達だからね。でもね、ヒトラーや近衛文麿とかならともかく、捕まった共産主義者の彼女や芥川龍之介の知人、はてはよくわからん客寄せの芸人の話とかを、メインの話をぶつ切りにして挟み込まれても正直困る。
作者はあとがきで昭和天皇を中心に色んな人物を出すことで「昭和」を書きたかった的なことを言ってたが、うーーーん、と唸ってしまう。確かに多くの視点から昭和を見れるのは良いけど、いくつかの残念な点のせいでこいつら全部要らんだろって思っちゃうんだよね。
残念な点の一つ目。ページ割きすぎ!自分の印象じゃ半分くらいは関係ない人の話で埋まってるぞ。いや、流石に半分は言い過ぎた。が、とにかく多い。特に共産主義者視点。
二つ目。小説か!(タカトシ)あのね、女性視点の時が特にそうなんだけどさ、基本的に一人称で書かれてんの。で、誰かのセリフから始まる。文学作品かな?って感じで前後の話とまったく合ってない。浮きまくり。芸人の淡々とした独白とか申し訳ないが面白くもなんともない。
完全に否定はしないけど、もうちょいなんとかならなかったのかねぇ。
良かった点ももちろんある。と言うより、自分の読みたかった所がちゃんと書かれている。具体的には統帥権や政治にどこまで口を出して良いのか等の部分。ちゃんと書くべきとこは書いてる。んだけど、敗戦後からは駆け足気味かな。崩御のとこなんて数ページどころか数行だもんな。まあ、ここはあえてそうしたのかもしれないけど。
マイナス点ばっか上げてしまったが、間違いなく読んで良かった。昭和天皇の愛されっぷりも大いに納得。
ビザンツ皇妃列伝 憧れの都に咲いた花
星4つ★★★★☆
ビザンつ帝国の皇后から8人を、その時その時の帝国の状況を交えつつ語っていく。
王朝の話が好きだ。天皇はもちろん、新しい王朝が生まれては滅んでいく中世ヨーロッパの歴史も好きだ。しかし、一部の例外を除いて、皇后が取り上げられることは無いのでこういう本は嬉しい。しかもそれが日本じゃあまり扱われてないビザンツだからなおさらだ。
この本の良い面であり、人に依っては悪い面になるのが、著者の想像がかなり入ること。これには幾つかの仕方ない理由がある。まず資料がとにかく少ないこと。基本、皇帝のおまけ扱いでしか書かれないので特にその心情面は本当に想像する以外にない。次が、当時の歴史家は皇后を悪く書く癖があり、著者がこれのおかしな点を指摘するんだけど、若干、彼女たちに感情移入しすぎな点は気になる人がいるかも。
8人のエピソードの中で面白かったのはやっぱり最後の2人。なんてたって帝国滅亡直前の皇后だからね。
胸を張って日本はスゴイと言うために 日本史から見た日本人 古代編
星4つ★★★★☆
面白い日本史の本とつまらない本の違いはどこにあるのか、この本を読んで気づいた。それは作者が世界史に通じているかどうかである。井沢元彦、渡部昇一。この2人は世界史の知識があるだけじゃなく、日本史と比較し読者に解説するのが本当に上手だ。
で、この本は現代まで通じる日本人らしさの源流を古代まで遡って解説するというものである。
この本のいい所であり、悪い所でもある点が1つ。それは全編にわたって「日本人スゲーーー!」で埋め尽くされてることだ。○○が作られたのは平安時代でこれはヨーロッパより100年も早い、とか終始こんな感じ。が、これは仕方ないことなのである。というのも、この本が書かれたのは昭和48年。ちょうど世界が日本を成り上がり者として見ていた時代。日本はこんなにも古い歴史と文化を持ってるんだと世界に、日本人に知らしめる必要があったんだと思う。
なわけで古い本なのである。が、自分は古い作品が媒体に関係なく苦手だ。にもかかわらず、この本は問題なく読めた。事前に古い本だと知らなければ気付かずに読んでたかも。
あと面白いと思ったのは連続性の話。イギリス人が今の自分達との繋がりを感じるのは16世紀からでそれ以前のイギリス史には連続性をあまり感じないらしい。対して日本人は少なくとも奈良時代に断絶は感じてない。万葉集や源氏物語を自分達と繋がりのあるものとしてとらえてる。ん?そうか?と思う人もいるだろうが、歴史を連続性で見るというのは個人的に発見だった。
それにしても、いくら海外に住んでたことがあるとはいえ、世界史(というか海外の文化)の知識量が凄まじよこの人。
やっぱりソ連はおそロシア オリガ・モリソヴナの反語法
星4つ★★★★☆
昔チェコのモスクワ学校に通ってた主人公が、当時ダンスの教師だった女性の謎に迫る。
まあ、夢中で読んじゃったよ。この作品の面白さの要素は複数あって、1つが謎解き要素。オリガ・モリソヴナという人間の来歴。彼女の周囲にいる同じく過去の見えない人物。この本のメインであり、一度読んだら止めどきを失う。
次の要素がソ連が舞台という点。歴史上でも大変ユニークな国だけど、この国を舞台にした話を書くにはしっかりとした知識がないといけない。日本やアメリカの話を書くのとはわけが違う。その点、著者はこの作品の主人公と同じくモスクワ学校出身であり、本の中にもそのリアルが反映されている。
次が絶望的な状況で生きる人間の姿。食料も無く、人間の尊厳も奪われという収容所(?)での生活の描写がとても生々しい。誇張されてる部分もあるのかなとも思いつつ、当時のソ連ではこんな事が起きてたんだねえ。
そして1番重要なのがこの話はフィクションとノンフィクションが混じってるということ。どこまでが本当なのかまったく分からないレベルで融合されている。
1つ難点を言うと、タイトルにもなってる彼女の反語法がいまいちピンとこなかったというか、嫌な言い方をするなら、これって著者の身内ネタなんだよね。自分はそれに乗れなかった。読み方が浅いだけかな?
ヴァンダル興亡史 地中海制覇の夢
星3つ★★★☆☆
北アフリカと地中海を約100年支配したゲルマン民族の王国の歴史を扱った本。記述の仕方がごく全うで特別な個性は無い。まあ、歴史の解説本にそんなの求めてないが。自分は一応歴史好きなんだけど、この国のことはまったく知らなかった。
本の前半は、ヴァンダル族を率いてヨーロッパ大陸からアフリカへ渡り、たった一代で王国を築いた英雄ゲイゼリックを柱として進行していく。後半、彼の死後は衰退と滅亡で幕。
ヴァンダル王国という国そのものにはあまり魅力は感じなかった。個人的なこの本の価値は別のとこにある。それはローマ帝国、東・西ゴート王国、ビザンツ帝国が所々に出てくるという点。ローマ帝国の本って沢山出てるのにその滅亡を書いたものってほとんど無いよね。もちろん自分が知らないだけであるとは思うんだけど。東・西ゴート王国に至ってはそもそも扱う本自体が数えるほども無い(この本の著者による東ゴート興亡史という本はある)。で、ヴァンダル王国誕生から滅亡の期間がちょうどローマ帝国が亡ぶ前後に位置してるわけ。ほんの少しだけどこれらの国の解説が時折入るわけ。これが有難い。
ビザンツに関しては何冊か読んでるんだけど、それらの本の中でヴァンダル王国の名前を見たことって無いんだよね。俺が見逃してる可能性はもちろんあるが。最終的にヴァンダル王国を滅ぼすのはビザンツなんだけど、ビザンツの本でヴァンダルを滅ぼしたなんて記述は見た記憶が無い。ヨーロッパ史って意外な所で意外な国の名前が出て驚く時があるよね。
本筋がつまらない訳では決してないけどヨーロッパ史全体の把握に少しだけ助けになる本って感じかな。
諸葛孔明以後はどうなったの? 黄昏三国志
kindie版
何故か描かれることの少ない孔明死後の三国志。そこをきっちり解説してくれる、ニワカには有難い本。
百年の誤読 - 岡野 宏文 豊崎 由美
笑いと不快さが混じった対談形式の本。